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心残り後半戦【プラリア試作】 [アトラ・ハシス]

以前に前半だけ乗せたプラリアの後半です。
前半は<こちらの記事→【心残りを補完すべし】

マスターにレイニさんの反応をお聞きしてみるにしても、
想定と違うご返答をいただいたらお蔵入りしそうな気がしたので
お聞きする前にさらしておこうと思い至りました。

前半に引き続き愛の国おフランス語が出てきます。
フランス語お手紙ネタで幼少期のプラリアも書けそうです。
書くとしたら、おそらくタウのお母さんの一人称かな?

ところでこのプラリア、タイトルが決まってません。
せっかくなのでおフランス語タイトルを付けたい気がして
愛のフレーズ集なんかもチェックしたんですがね…

Je ne peux pas vivre sans toi.「君が居ないと生きて行けない」
それは私への依存?って言われそう(笑)

Je t’aime plus que tout.「何よりも君を愛している」
シンプルに。でもこのプラリアには似合わないかも。

Tu es la cime de mes désirs.「私が一番欲しいのはあなたです」
これ…だなぁ。一番しっくりくるねぇ。

マスターにお聞きして、前半と後半をつなげることができたら、
タイトルつけてまとめてアップしなおそうと思います。

*****

「俺は初めから女性として扱っていたつもりですけど…。あぁ、でも、どちらかというと、最初は親愛の気持ちが強かったかもしれません」

 レイニの項に柔らかな感触が触れた。温かな心地。唇を押し当てられたのだと気づく。
 動くことなく、じっと、押し当てられるだけの口づけ。
 温かく、柔らかく、優しくて、微かにかかる息がこそばゆい。
 彼はほかの場所にもこんなふうに優しく触れるのだろうか…そう考えてレイニの身体は途端に緊張した。性的なものではなく、愛情を伝えようとしているのだと思おうとしても、つい意識してしまう。

「あ、あの! そうだ! 前から聞きたかったことがあるの!」

 身を捩って唇から逃げだしたレイニは、大げさなほどの身振り手振りで話題を探す。

「私、貴族社会ってよくわからなくって…えっと、ほら、大衆小説の中みたいに、決闘とか舞踏会とか本当に頻繁にあるもの…なの?」

 この雰囲気を変えられるならなんでもよかったとはいえ、突拍子もない話題にしすぎただろうか。やきもきするレイニを他所に、タウラスは口元に手をあててなにか思いめぐらせている。

「決闘はどうかな…一度だけ手袋を投げつける場面を見たことならあります。舞踏会や夜会は情報収集の場にもなりますから、あちこちで頻繁に開催されていましたよ」
「そうなんだ…。それで、やっぱりあなたは、女の子に囲まれるのね?」
「根に持ちますね…」
「当たり前でしょう。私には男の格好をさせておきながら、あんなに侍らせちゃって…すごく苛ついた」
「あれは、薬のせいですよ。オリンさんがくださったんです。その…ホレ薬を」
「あぁ、もしかしてホラロの…」

 レシピの存在を思い出した様子のレイニに、タウラスは「ええ」と困った顔で頷き返す。

「物が物だけに、部屋にも病室にも無防備に置いておけずに持ち歩いていたんですけど、いつのまにか落としたようで…」
「かえって事態を悪化させてるじゃないの」
「申し開きのしようもないです…」
「まぁ、レシピを見たかんじ持続時間はそれほど長くないみたいだったし、私のことも助けてくれたみたいだし、今回は許そうかな」

 顔をみあわせてふふっと笑いあう。
 そこから二人はホラロの偏愛の行方や、村人の様子、これからのことを語りあった。
 話題はつきず、穏やかな時間が流れる。

「踊りませんか?」

 不意に話題をかえたのはタウラスだった。

「そんな素敵な姿で、座っているだけでは勿体ないです。教えますから」

 手を引かれ立ち上がると、向かい合わせに立ったタウラスがレイニの両手をとる。
 思い描いていたダンスというよりはお遊戯会のような仕草だ。

「足の運びから教えますね。ホールドはまた後で。言うとおりに動いてみてください」
「うん」
「まず、右足を後ろに」

 言われたとおりに右足を下げると、タウラスの左足が一緒に進みでる。
 急に足の間に割り込んでこられてレイニは内心で焦った。
 タウラスの足運びは思いの外大きくて、思い切って足を退かないと身体がぶつかりそうになる。
 よろめきかけたところを背中に廻った腕に支えられ、なんとか転ぶことは免れた。

「大丈夫ですか?」
「うん、平気」
「もしかして、足に負担が…?」
「大丈夫。思ったより大股で驚いただけだから」

 大股という表現が面白かったのか、タウラスは軽く声をあげて笑う。

「大きく、振り子をイメージして動いていくんです。次は、左足を横…左側に持っていって…。最後に右足を引き寄せてそろえる。そのとき体重は動かしてきた右足に乗せてください」
「こう?」
「えぇ。これで半分。次は左足を前に、右足を右に流して、左足を引き寄せる。基本のステップはこれだけです」

 言われたとおりに足を動かしていくと、最初の位置に戻ってきていた。
 大きな動きには驚いたが、足運び自体はわりに単純なようだ。それに、二人の足がシンクロするように移動していく様子が面白い。

「ステップが少ないものにしましたけれど、ブルースのほうが緩やかでよかったかな…」
「覚えやすいほうがいいわ。ちょっと、練習していい?」
「どうぞ。できれば足元を見ないように体で覚えてください。…1で後ろ、2で左、3で揃える。1で前、2で右に、3で揃える」

 紡がれる言葉通りに足をうごかしていく。
 最初はまごつく部分もあったが、すぐにスムーズに足が運べるようになってきた。

「できそうですね。では、ホールドを」

 タウラスが両手を広げて背筋を延ばす。わずかに顎を持ち上げるように立つ姿は、常とは一味違う凛とした様子だ。頭を逸らしているぶん伏目勝ちに投げかけられる視線は、どこか艶っぽい。

「親指をたてて、右手をあわせて下さい」

 タウラスの左手に向けて差し出したレイニの右手は、互いの親指を交差させるようにして合わせられる。タウラスは人差し指と中指とでレイニの小指を挟み込むようにしてから掌を包み込んだ。

「こちらの手は軽く握る感じです。反対側は…」

 背中に自然に廻りこんだ手が左肩の下あたりに添えられる。

「肘をあげて、俺の腕に手を添えてください」
「こう?」
「そうです。背筋を伸ばして、顔は少し左向きに。重心は左足に乗せて…」

 言われた通りに姿勢を整えていくと、半歩ずれて顔を逸らして向かい合う形になっていく。
 なんとなく、正面から見詰めあって踊るイメージを抱いていたが違うようだ。

「1で後ろへ…左に…」

 言葉を追うように右足を退き、すぐに左足をスライドする。

「揃えて。1で前へ、右に、揃える…one、two、three…one、two、three」

 ふわり、ふわりと身体が振れる度、ドレスの裾も揺れてレイニの足をくすぐった。
 ホールドしている方が思い切って足を運びやすい事に気付く。

「飲み込みがはやいですね。続けて踊れるんじゃないですか?」
「うん。やってみたい」
「では、カウントをとりますね。…one、two、three…one、two、three…」

 紡がれるカウントに合わせて、カツコツと靴の音が重なる。
 やがてカウントを刻むタウラスの声は途切れて、無音のまま二人の靴が鳴らす音だけが規則的に響き始た。
 音がなくても踊れるものなのだなと、レイニは感心する。とはいえ心許なくて、目線だけでタウラスを見ると、彼の目線もレイニに向けられていた。

「Je、te、aime、je、te、veux…」
「え?」

 唇が唐突にカウントとは違う音を刻んで、レイニは足をもつれさせた。ふらついた身体を柔らかく抱き留められる。

「なに?」
「Je t’aime. Je te veux…」
「今度は、どんな意味?」
「『Je t’aime』は、愛しています。『Je te veux』は…」

 言葉が途切れる。レイニの背に添えられていたタウラスの腕が、腰を力強く引き寄せた。
 ドレスに合わせた踵のある靴のせいで、同じ高さになった目線が真正面から絡む。

「あなたが欲しい」

 熱っぽい目だった。

「……駄目ですか?」

*****
この後に、ドレスをもっと着ていたいから駄目と言われて、
着たままでもできないことはないですけど…な流れもあったりした(笑)
踊ってるのはワルツです。ボックスステップとかいうやつ。
レイニさんの足の負担を考えて回転は敢えて省いて踊っています。
タウの知識の数値の大半はこういうことで埋まってるんだろうなぁ…。

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