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ライキャク【南至SS】  [PBWのSS]

ホムペサービス終了らしいのでブログに移したSSシリーズ。

旧ホムペに収納してたSSはほぼカタカナでタイトルを付けてて、今もひらがなorカタカナオンリーのタイトルつけがちだから、たぶん昔ながらの私のクセなんでしょうね…。拘りってほどじゃないけど、パッと一言で読めるタイトルが好きなのかも?
SS内にでてくる「其処人」っていうのは「もう一人の自分」というように表現されていたんだけど、つまり現実世界に位相が重なってたってことかしら?って、今になって説明する方法がわかってきた気がする~。

*****【ライキャク】*****

 2007年師走。
 今年も残すところあと半日ほどになった頃、至は脚立の上でぼんやりと雑巾を往復させていた。
 この一年いろいろあったなぁとしみじみと思い、いや、いろいろありすぎだろう…特に後半…と少々肩を落としたりする。

 そう、いろいろとあったのだ、ありすぎるほどに。
 今だって、のんきに大掃除なんかしている場合じゃない気がするのだが、いかんせん、毎年恒例、家族総動員のこの行事を抜け駆けすることは許されるはずもなく。
 担当区分の玄関前に脚立を出し、明り取りの窓を拭き出してかれこれ10分は経っている。
 30センチ四方の擦りガラスはもう無駄にピカピカだ。

 ぼんやりと、アレヤコレヤと頭を巡らせながら能率の悪い作業を続けていると、「ごめんください」と声をかけられた。
 どこか聞き覚えのある声だ、それもつい最近に。
 はい? と振り返って、視線の先にいた人物に、至は危うく脚立から落ちかけた。
「う…うえぇ…!? な、なんで、ってか…レジ…うえぇ!?」
 あわあわと要領を得ない言語を発しながら、まろぶように脚立を降りる。
 途中、あわてすぎてガショガショ揺れる脚立に妙な具合に足をとたれたりしながら、どうにかこうにか地におりたち、正面から対峙して初めて彼女は瞳を細めた。
「こんにちは、至さん」
「あぁ、うん、こ、こんにちは……」

 亜麻色の柔らかそうな髪が、冬の陽射しに透けて輝く。
 あの雨の中で見たそのままの姿の彼女が、ほんのすこし手を伸ばせば触れられる場所に立っている。
 そう、あの雨の中…。
 つられるように綻びかけていた口元を、ぎゅっとひきしめる。
「な、なんともない…んかな、えっと…その…その…」
 どういう言葉を選べばいいのかわからないまま、至はもごもごと口篭った。
 なにせ数日前に見た彼女の姿は不穏すぎるもので…それは普通、安易に聞いてはいけない類のことで…。
 言葉が紡げない分、視線ばかりを彼女の体にむけて注いでしまう。

「ちょっと、おにーちゃん!!!」
──べしょっ
 不意に割り込んできた妹の声に振り返ったとたん、視界が真っ暗になった。
 真っ暗というか、真っ黒というか…そしてほこりっぽい。
「お客さんのドコのナニをジロジロみてんの! ってか目がやばいし! キモイし!」
 視界を覆っていたらしい雑巾がボタリと地面に落ち、レジーナを庇うようにした薫が、言いたい放題まくし立てているのが見えた。
「ったくもう…。いらっしゃい、なんかゴメンナサイネのっけから最低なお出迎えで。おにーちゃんたまに人の話聞いてるか聞いてないかわかんないときがあるから、きっとお客さんがみえるっていうの聞き漏らしてたんですよー?」
 コロリと表情をかえてとりつくろう薫の言葉に、思わず眉をよせる。
 客が来るなんて話はきいていない、そしてそれがレジーナであるというのも。
「おかーさーん、お客様、みえたよー?」
 家の裏手に向けて呼びかける薫に、眉間のしわは更に増える。
「客って…だって、レジーナさんはオレの…」
 其処人と続けようとして、あわてて口をつぐんだ。
 なにかよくわからない事態が起きているのは確かで、そして薫はそれをなぜだか受け入れていて…。
 なんとなく今はこの状況に順応しておくほうがいいような気がする。
「オレの…?」
「……なんでもない」
「オレの…」
 薫の視線が痛い。
 まずったと、心底思った。おそらく最もしてはいけない受け答えをしてしまった。
「おかーさーん、早くってばぁ! …で、オレのなんだって?」
 はぁい、という母親ののんきな声をききながら、至は妹の好奇の眼差しに気付かないふりをきめこんだ。

*****
結果小説ではかかれなかった部分をなんとなく想像で…
「其処人」というのは「もうひとりの自分」なのデスヨ。
なにやら不穏なビジョンをみてしまった後の出来事なのデスヨ。
これこそ参加者さんにしかわからないだろうSSだなぁ…(ふ)
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