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おなかがすいた。 [アトラ系プラリア]

スマホでチマチマ書いていたのがまとまったので
予告外突発で予約投稿をかけておきます。

タウはなんで味音痴になったのか…を考えてみました。
普通は成長過程で味覚がうまく形成されないのでしょうが
タウ母がメシマズな人というのは違う気がして。
なので自分でおかしくしたのであろうと思いまして。
そのきっかけ話。
時期は、11歳~12歳かな。

タウ母は乳母時代に手にしたお金を元手に
日用品のお店を細々と営んでいます。
1階が店舗と水回り、2階にタウと母の個室の小さな家。
店舗は魔女宅のグーチョキパン店がイメージ近いです。
あれが、もう少しこじんまりした感じがいい。

母はタウが13歳になってすぐくらいで亡くなります。
プラリアに書く母はいつもピンピンしてるんだけど
翌年あっさりなくなってしまう原因はなんなのだろう?
…そのへんも、ちゃんと考えるべきか…(汗)

*****【おなかがすいた。】*****

 空になった皿を見つめて、タウラスはうーんと首を捻っていた。
 近ごろ食べても食べても足りない気がする。すぐにお腹が空いてしまうのだ。
 今だって用意されていたおやつを食べきって、でもまだなにか物足りない気がしていた。

 おやつの皿を片付けながら、調理台の片隅、かごに盛られたパンが目についた。
 明日の朝食用だろうけれど、一つくらいなら食べても問題ない気がする。
 でも、朝食を思い浮かべたせいか一緒にベーコンと卵も食べたくなってしまった。
 店につながる扉に椅子を寄せて、高いところにある小さな窓からからそっと様子を伺ってみる。
 母は誰かと談笑している様子だった。たぶん常連さんが来てくれているのだろう。代わりに店番してるから作ってと頼むのは気が引けた。

 そこでふと、今日の宿題を思い出した。
『これから挑戦したいことを考えてきましょう』
 こういう宿題の時、タウラスの答えは決まって一つのことに行き着く。おやつの前にノートに『お手伝いできることを増やす』と書いたばかりだった。
 母の手を煩わせずにおやつを準備するのだって、新しいお手伝いになるだろう。
 そう思い至ったら、俄に挑戦する意欲がわいてきた。

 椅子から降りてキッチンを見回してみる。
 ベーコンと卵の場所は知っていた。フライパンはいつもコンロの脇にかけてある。
 朝食の時、紅茶をいれるのはタウラスの役目で、隣に立って調理する母の手元は毎日なんとなく眺めていた。だから手順はだいたいわかると思う。

 早速材料を集めたタウラスはコンロに火を付けた。
 強い火は怖い気がして、小さめの火にかけたフライパンに、そっとベーコンを並べてみる。
 母はいつも縁が少しこんがりするくらいに焼いてくれて、あのすこし香ばしい風味がとても好きだった。目指すべきはあれだ。
 控えめな音をたてはじめたベーコンは、きゅーっと縮みながらよい薫りをたてている。
 このくらいかな、と思うところで取りだそうとして戸惑った。フライパンにくっついていて外れない。

「あれ? うーんと…」

 つついたり、こそげたりするうちに、ベーコンは無惨に千切れていく。

「熱っ…」

 四苦八苦しながらなんとかベーコンを全部皿に移した。
 ふう、と息をつき、次には卵を手に取る。
 卵は目玉焼きの日とスクランブルエッグの日と半々なのだが、今の気分的にはスクランブルエッグだった。

 ベーコンをひきあげたフライパンに直接卵を割ってしまってから、母が器から卵を注ぎ入れている日があることを思い出した。直接割るのは目玉焼きの日なのだろう。
 こうなったらもう固まる前に混ぜるしかない。ひたすらにグルグルしてみると白身と黄身がマーブル模様に混じりあう傍から固まっていく。
 白身の固まりは残っているけれどそれなりに混ぜることができた。
 でも、いつももう少し薄目の色合いで、もっとふんわりしていると思う。
 なにか混ぜているんだろうか?
 絵具だったら白で伸ばせばいいのだろうけど…。
 スパイスラックを見ると、白色の調味料がいくつか目についた――どれが正解だろうか?

 ひとつ手にとって振り掛けてみる。
 ぐるぐる混ぜてみても見た目はあまり変わらなかった。
 ほかの一つを手にとって、それも入れてみた。

「うーん…ちがう…」

 数分後、なにかボソボソした細かなかたまりが沢山出来ていた。
 ずっと火にかけながらかき混ぜていたから、変に固まってしまったのかもしれない。
 もしかして、水とか液状の調味料をいれるほうが良かったのだろうか…そう推測しながら、諦めて盛り付けた。

 皿の上には、丸いパンが一つ。
 散々に千切れたベーコンが一枚。
 ポソポソした細かな卵の粒が一盛り。
 母が作る朝食に、色目と配置だけは似ている。

「いただきます」

 ポロポロ逃げていく卵を口に運んだ――美味しくない。
 ベーコンにも手をつけてみる。カリカリの香ばしさは少しも感じられなかった。
 でも、食べられなくはない。
 母が作るものとは大分違うけれど、自分一人でやり遂げたことを誇らしく感じていた。
 なにはともあれ、お腹を満たすという目標は達成されたのだ。

「ごちそうさまでした」

 空になった皿を前に、タウラスはきちんと手を合わせた。
 それから、調理に使った道具達を丁寧に洗った。

*****

「ごめんね、すぐにごはんにするから」

 店を閉めて奥のキッチンに戻ってきた母のアリエスは慌てた様子でそう告げた。
 タウラスが時計を見上げると確かにいつもより遅めの時間のようだ。
 食材を置いた棚をみていたアリエスが「あれ?」と呟く。

「卵、減ってる…?」
「さっき食べた」
「何か作ったの?」
「うん。パンとベーコンと卵の朝ごはんみたいなやつ」

 アリエスは少し驚いて、独りで火を使ったらしいことが心配になって、しかし息子のどこか誇らしそうな様子に咎めることは出来なかった。

「いろんなことに挑戦するといいって、先生が言ってたから」
「そう。すごいね、頑張ったんだね」

 タウラスの髪を撫でてやりながら、アリエスはどこか淋しさを感じてしまう。
 息子が独りで出来ることが増えていくのは、嬉しくもあり淋しくもある。
 男の子だ。いずれ口もきいてくれない時期がくるのかもしれない。だからこそ、もう少し手のかかる時期で留まっていて欲しい複雑な親心だった。

「美味しくできた?」
「ううん。お母さんが作るのとちよっと違ってた」
「そうなんだ。お母さんも食べてみたかったな」

 タウラスは微笑む母をじっと見詰めた。
 美味しくできたら、かわりにごはんを用意できるだろうか。そうしたら母は少しは楽になるだろうか。
 それはなによりも母の助けになるのかもしれない。
 しかし、今日の出来映えではまだ母に披露するのは気が引ける。

「上手にできたら食べて」
「わかった、楽しみにしてる。でも、火を使うときは気を付けてね、慎重にすること。わかった人!」
「はい!」

 昔からかわらないやりとりをして、親子は二人で微笑みあった。

 眠りに就く前、タウラスは宿題のノートを取り出した。
 そして、『お手伝いできることを増やす』と書いた隣に『お母さんにおいしいごはんを作ってあげる』と書き添えた。

*****
そして、頑張った結果が残念な方向に転がるのだった。
母の死因がタウの料理を無理して食べた…じゃないといいな!

母は反抗期にはいる前あたりで亡くなってしまうので
口も聞いてもらえない悩ましい時期は体験しないのですが。
(反抗期でも口は聞いてくれるタイプだと思うけど)
で、反抗期なしで育った息子は、その後、母のような愛に触れ、
暫くの間レイニさんにじわっと反抗するのでした(笑)
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