Things went his way.【spin off】 [アトラ系プラリア]
タウの主シールと、レイニさんのお嬢さんリッシュちゃんのお話。
アトラのスピンオフというか、パラレル要素満載のプラリアです。
シールはともかくリッシュちゃんについては勝手妄想満載だからね!
一人称も二人称も口調も性格も、全部私の妄想でしかありません。
リッシュちゃんは下船時にタウを見かけ別の船に乗っていると知っていた。
シールはリッシュちゃんからその情報を得られたので密かに感謝している。
それもあってシールはリッシュちゃんを気に入っています。
コウマンチキ対応なのでリッシュちゃんはそうとは思ってないだろうが…。
乗っているのがアトラ難民達と同じようなクルーズ客船だとして、動力は蒸気機関+帆装が残ってる時期のものかなとイメージしています。
一般の乗船者(シールもね)は客室を割り振られていて、リッシュちゃんは航海士として別に部屋を持っていると想定。
シールはカリスマ有設定なので、なんやかんやで船の中心人物になっていそうだな~と思っています。そんな中二病設定だから書くにも一苦労なんだけどな!
シールの簡易設定はこんなだよ。
名前:シャムシール・ルマ(「シール様」「タウ」と呼び合っていた)
年齢:22歳/髪:プラチナブロンド/瞳:翡翠色/肌:無駄に美白
妾腹ながらほかに男子がおらず、ゆくゆくは家督を継ぐ予定だった。
母親はあまり身分の高くない異国の女性=お家騒動的なものもあったかと。
平たく言えばコウマンチキ系美人。タウラスにだけは弱い面も見せていた。
出自についてはもっと中二病設定がたんまりあります。いずれ書けたら書きたい。
政略婚先の騒動で、数年前に敬愛していた姉(←タウ的には秘密の恋人)を殺されていて、その時にタウもシールも精神的にだいぶズタボロになっていたのですが、お互いがストッパーになっていろいろ踏み留まったという経緯があります。なので離れているとお互いに心配でならないという人達です。
*****【Things went his way.】*****
「匿え」
無遠慮に叩かれたドアを開けると、無遠慮な物言いの美形が立っていた。
了承する前にずかずかと部屋に入ってくる。
そのまま勝手に隅の簡易ベッドに向かう彼に、唖然とした。
「は? ちょっと、なに? なんなの?」
「匿えと言っただろう。とにかく邪魔されず眠りたいんだ」
言われてみれば、顔色が少し悪い気がする。
この船は、凪の時は燃料を節約して進路をとることが当たりまえになっていて、風魔法が堪能なこの男はその要になりつつある人物だ。
乗船当初から石炭が尽きる事を危惧していたようで、技術者を巻き込み、更に乗船名簿から協力者をピックアップして、当番制度も整えてしまった。
その実績のおかげもあって、この船では一目置かれる存在だ。
とはいえ、魔法堪能といえる人材はそこまで多くはないから、今日も自ら制御の為に詰めていたんだろう。
「寝るなら、自分の部屋でいいじゃん」
「あそこじゃ邪魔される」
誰にと聞きかけて、思い当たることがあった。
この傲慢男には、妙齢の女性たちが隙あらば取り巻いていて、より近くにいこうと日々牽制しあってる。
個室まで押し掛けてる人もいるってことだ。
正直、私には、そうまでする気持ちがよくわからないんだけど。
とにかく、貴重な休憩時間を奪うなんてひどい話だと思ったから、追い出すことはやめておく。
「あいつが居たら押しつけて手打ちなんだがな。こんなときに居ないとは使えない奴だ」
ふんと鼻をならす様子に、以前から耳にしていた名前を思い出した。
「あー、えっと、タウさんだっけ?」
「気安く呼ぶな」
酷く不機嫌な声音で一喝される。
「あいつをそう呼んでいいのは俺だけだ」
なにそれ、と思う。
まるで恋人を束縛しているみたいな物言いだ。
「あんたとその人ってなんなの? 主従って言ってなかった? 男同士でできてるの? 」
「はぁ?」
心底小馬鹿にしたような声音と共に、翡翠色の瞳がすがめられる。
むかつく表情なのに、むかつくくらい綺麗だ。
美人は怒ると凄みが増すらしいから、男でもそういう法則でより綺麗に見えるのかもしれない。
「寝言なら寝て言え。その呼び方はタウの重荷になるからだ。あいつにあんな顔させるのは、もう、俺だけでいい」
小さな窓の外を睨む目は、なにかに怒ってるように見える。
でも、どこか淋しそうにも見えた。
心中は全然わからないけど、どうも複雑な心境らしいのはなんとなく解る。
「んー、結局あんたは従者さんのことがメチャクチャ心配で、メチャクチャ好きって事だよね?」
一瞬、ぽかんと呆けた傲慢男は、こっちを見ると、唇を一文字に引き締めてどこか真剣な面持ちを浮かべた。けれど、それも束の間、なにか憐れむような顔つきで溜め息を深々と吐き出す。
「お前、もっと語彙力を培ったほうがいいぞ。…あと、馬鹿は時々聡いから驚かされる」
「え、なに? なにに驚いたの?」
付け加えるような呟きが聞き取りきれなくて、眉を寄せる。
「二度は言わない。俺の話は一度で聞き取れ、阿呆」
「もう、バカとかアホとかそんなのばっかり!」
「おまえが馬鹿でなおかつ阿呆だから仕方がないだろうが」
はぁ、とわざと聞こえるような溜め息をつかれて、いらっとした。
でも、毛布を手にとる横顔が、やっぱりいつもよりずっと疲れているように見えたから、文句をいうのは飲みこんでおく。
「ねぇ、あのさ…大丈夫だよ」
かわりに口をついてでた言葉に、なにが、というように胡乱な目を向けられた。
「従者さんは、母さんの船に乗ったと思うから。母さんなら絶対に船を沈ませたりしないし、ちゃんと生きてるよ」
「それは分かってる。お前に技術を仕込んだのは母親なんだろう? あっちの船のほうが安定してるのは予想がつく。大体、タウが死ぬわけないだろ。あいつは俺の知らないところで死ねないことになってるからな」
またよくわからないことを言う。
ほんと、従者さんは一体どういう人で、こいつとはどんな関係だったんだろう?
「そもそも同じ名前の航海士が別々に船をだしてるとは思わないだろうが。完全に惑わされた。じゃなきゃ行き違うなんて有り得ない」
「なにそれ、私が母さんの船を降りたのがいけないってこと?」
「ん? 違う。悪いのは俺だ。不確定要素を潰さずに乗船したんだからな。お前はお前の能力をここで正しく生かしてる。褒められはしても糾弾するのは違うだろ」
『その通りだ、馬鹿が』と返ってくると思っていたから、違うことを言われて混乱した。
「え? ん? ごめん、よくわからない。私、誉められたの?」
「そうだった…。馬鹿は解りやすく誉めないと伸びないんだった」
結局馬鹿にされてるみたいだ。
「もういいよ。寝るんでしょ? 私、外にいってるから」
倒れられたら航海に支障がでるし、一緒に居ておねーさま方から妬みを買うのもめんどくさい。机の上から仕事道具を集めて、さっさと退室することにする。
「いい判断だな、リッシュ」
突然のことに心臓が跳ねた。
ちゃんと名前で呼ばれるのは初めてだ。そもそも覚える気がないと思っていたから、不意打ちすぎる。
「まあ、とにかく…お前がこの船に居てよかった」
浮かべられた笑みは極上で、吸い寄せられたまま、目が離せなくなる。
なんて言えばいいか分からなくてアワアワしていると、こちらに向かって懐中時計が放られた。
「一時間半で起こせ。起きたら何か食う。それから、寝込みは襲うな」
「う、うん。わかった」
了承して、言われたことを反芻する。
一時間半経ったら起こす。
なにか食べ物を用意する。
寝てるとき襲わない。
そこまで考えて、んん?と思う。
「襲うか! ばーか!」
力任せに閉めたドアの向こうで、ははっと愉しそうな笑い声が聞こえた。
あいつはきらいな食べ物あったんだっけ?
そういえば、天候の予測をまだ教えてなかった。
まとめなおして、食事と一緒に持っていこうか。
そしたらあいつはどんな顔でなんて言うんだろ…。
あぁ、どうして、私、あいつに誉められようとしるんだろう…。
「うー、むかつく…」
ねぇ、従者さん。
あなたもあの綺麗な笑顔に躍らされてるくちですか?
*****
タウ「そうかもしれません(笑)」
「Things went his way.=(結果は)彼の思う壺になった」です。
リッシュちゃん主観なのは女性一人称のほうが書きやすかったから。
三人称にするとなんか伝わりにくい部分が多くなってしまうし、
シールの一人称だと、私が疲れすぎて書けなかったからね!
アトラのスピンオフというか、パラレル要素満載のプラリアです。
シールはともかくリッシュちゃんについては勝手妄想満載だからね!
一人称も二人称も口調も性格も、全部私の妄想でしかありません。
リッシュちゃんは下船時にタウを見かけ別の船に乗っていると知っていた。
シールはリッシュちゃんからその情報を得られたので密かに感謝している。
それもあってシールはリッシュちゃんを気に入っています。
コウマンチキ対応なのでリッシュちゃんはそうとは思ってないだろうが…。
乗っているのがアトラ難民達と同じようなクルーズ客船だとして、動力は蒸気機関+帆装が残ってる時期のものかなとイメージしています。
一般の乗船者(シールもね)は客室を割り振られていて、リッシュちゃんは航海士として別に部屋を持っていると想定。
シールはカリスマ有設定なので、なんやかんやで船の中心人物になっていそうだな~と思っています。そんな中二病設定だから書くにも一苦労なんだけどな!
シールの簡易設定はこんなだよ。
名前:シャムシール・ルマ(「シール様」「タウ」と呼び合っていた)
年齢:22歳/髪:プラチナブロンド/瞳:翡翠色/肌:無駄に美白
妾腹ながらほかに男子がおらず、ゆくゆくは家督を継ぐ予定だった。
母親はあまり身分の高くない異国の女性=お家騒動的なものもあったかと。
平たく言えばコウマンチキ系美人。タウラスにだけは弱い面も見せていた。
出自についてはもっと中二病設定がたんまりあります。いずれ書けたら書きたい。
政略婚先の騒動で、数年前に敬愛していた姉(←タウ的には秘密の恋人)を殺されていて、その時にタウもシールも精神的にだいぶズタボロになっていたのですが、お互いがストッパーになっていろいろ踏み留まったという経緯があります。なので離れているとお互いに心配でならないという人達です。
*****【Things went his way.】*****
「匿え」
無遠慮に叩かれたドアを開けると、無遠慮な物言いの美形が立っていた。
了承する前にずかずかと部屋に入ってくる。
そのまま勝手に隅の簡易ベッドに向かう彼に、唖然とした。
「は? ちょっと、なに? なんなの?」
「匿えと言っただろう。とにかく邪魔されず眠りたいんだ」
言われてみれば、顔色が少し悪い気がする。
この船は、凪の時は燃料を節約して進路をとることが当たりまえになっていて、風魔法が堪能なこの男はその要になりつつある人物だ。
乗船当初から石炭が尽きる事を危惧していたようで、技術者を巻き込み、更に乗船名簿から協力者をピックアップして、当番制度も整えてしまった。
その実績のおかげもあって、この船では一目置かれる存在だ。
とはいえ、魔法堪能といえる人材はそこまで多くはないから、今日も自ら制御の為に詰めていたんだろう。
「寝るなら、自分の部屋でいいじゃん」
「あそこじゃ邪魔される」
誰にと聞きかけて、思い当たることがあった。
この傲慢男には、妙齢の女性たちが隙あらば取り巻いていて、より近くにいこうと日々牽制しあってる。
個室まで押し掛けてる人もいるってことだ。
正直、私には、そうまでする気持ちがよくわからないんだけど。
とにかく、貴重な休憩時間を奪うなんてひどい話だと思ったから、追い出すことはやめておく。
「あいつが居たら押しつけて手打ちなんだがな。こんなときに居ないとは使えない奴だ」
ふんと鼻をならす様子に、以前から耳にしていた名前を思い出した。
「あー、えっと、タウさんだっけ?」
「気安く呼ぶな」
酷く不機嫌な声音で一喝される。
「あいつをそう呼んでいいのは俺だけだ」
なにそれ、と思う。
まるで恋人を束縛しているみたいな物言いだ。
「あんたとその人ってなんなの? 主従って言ってなかった? 男同士でできてるの? 」
「はぁ?」
心底小馬鹿にしたような声音と共に、翡翠色の瞳がすがめられる。
むかつく表情なのに、むかつくくらい綺麗だ。
美人は怒ると凄みが増すらしいから、男でもそういう法則でより綺麗に見えるのかもしれない。
「寝言なら寝て言え。その呼び方はタウの重荷になるからだ。あいつにあんな顔させるのは、もう、俺だけでいい」
小さな窓の外を睨む目は、なにかに怒ってるように見える。
でも、どこか淋しそうにも見えた。
心中は全然わからないけど、どうも複雑な心境らしいのはなんとなく解る。
「んー、結局あんたは従者さんのことがメチャクチャ心配で、メチャクチャ好きって事だよね?」
一瞬、ぽかんと呆けた傲慢男は、こっちを見ると、唇を一文字に引き締めてどこか真剣な面持ちを浮かべた。けれど、それも束の間、なにか憐れむような顔つきで溜め息を深々と吐き出す。
「お前、もっと語彙力を培ったほうがいいぞ。…あと、馬鹿は時々聡いから驚かされる」
「え、なに? なにに驚いたの?」
付け加えるような呟きが聞き取りきれなくて、眉を寄せる。
「二度は言わない。俺の話は一度で聞き取れ、阿呆」
「もう、バカとかアホとかそんなのばっかり!」
「おまえが馬鹿でなおかつ阿呆だから仕方がないだろうが」
はぁ、とわざと聞こえるような溜め息をつかれて、いらっとした。
でも、毛布を手にとる横顔が、やっぱりいつもよりずっと疲れているように見えたから、文句をいうのは飲みこんでおく。
「ねぇ、あのさ…大丈夫だよ」
かわりに口をついてでた言葉に、なにが、というように胡乱な目を向けられた。
「従者さんは、母さんの船に乗ったと思うから。母さんなら絶対に船を沈ませたりしないし、ちゃんと生きてるよ」
「それは分かってる。お前に技術を仕込んだのは母親なんだろう? あっちの船のほうが安定してるのは予想がつく。大体、タウが死ぬわけないだろ。あいつは俺の知らないところで死ねないことになってるからな」
またよくわからないことを言う。
ほんと、従者さんは一体どういう人で、こいつとはどんな関係だったんだろう?
「そもそも同じ名前の航海士が別々に船をだしてるとは思わないだろうが。完全に惑わされた。じゃなきゃ行き違うなんて有り得ない」
「なにそれ、私が母さんの船を降りたのがいけないってこと?」
「ん? 違う。悪いのは俺だ。不確定要素を潰さずに乗船したんだからな。お前はお前の能力をここで正しく生かしてる。褒められはしても糾弾するのは違うだろ」
『その通りだ、馬鹿が』と返ってくると思っていたから、違うことを言われて混乱した。
「え? ん? ごめん、よくわからない。私、誉められたの?」
「そうだった…。馬鹿は解りやすく誉めないと伸びないんだった」
結局馬鹿にされてるみたいだ。
「もういいよ。寝るんでしょ? 私、外にいってるから」
倒れられたら航海に支障がでるし、一緒に居ておねーさま方から妬みを買うのもめんどくさい。机の上から仕事道具を集めて、さっさと退室することにする。
「いい判断だな、リッシュ」
突然のことに心臓が跳ねた。
ちゃんと名前で呼ばれるのは初めてだ。そもそも覚える気がないと思っていたから、不意打ちすぎる。
「まあ、とにかく…お前がこの船に居てよかった」
浮かべられた笑みは極上で、吸い寄せられたまま、目が離せなくなる。
なんて言えばいいか分からなくてアワアワしていると、こちらに向かって懐中時計が放られた。
「一時間半で起こせ。起きたら何か食う。それから、寝込みは襲うな」
「う、うん。わかった」
了承して、言われたことを反芻する。
一時間半経ったら起こす。
なにか食べ物を用意する。
寝てるとき襲わない。
そこまで考えて、んん?と思う。
「襲うか! ばーか!」
力任せに閉めたドアの向こうで、ははっと愉しそうな笑い声が聞こえた。
あいつはきらいな食べ物あったんだっけ?
そういえば、天候の予測をまだ教えてなかった。
まとめなおして、食事と一緒に持っていこうか。
そしたらあいつはどんな顔でなんて言うんだろ…。
あぁ、どうして、私、あいつに誉められようとしるんだろう…。
「うー、むかつく…」
ねぇ、従者さん。
あなたもあの綺麗な笑顔に躍らされてるくちですか?
*****
タウ「そうかもしれません(笑)」
「Things went his way.=(結果は)彼の思う壺になった」です。
リッシュちゃん主観なのは女性一人称のほうが書きやすかったから。
三人称にするとなんか伝わりにくい部分が多くなってしまうし、
シールの一人称だと、私が疲れすぎて書けなかったからね!
2016-07-18 00:00
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0