ドウドウメグリ【南至SS】 [PBWのSS]
旧ホムペに収納していたSSです。
ホムペサービス終了らしいのでブログに移しました。
収納にあたりちょっと読み返しましたが、書いた当時は正しく覚えていたことも、だんだん美化されているんだろうなぁ…って思ったりする。当時のことを覚えていられるように全部を箱庭に収納しておきたかった。複数スレにまたがりながらロール探索するPB3は、テキスト全保存するのがなかなか難しいんですよねぇ…。せめて結果小説だけでも読み返したい…というか、保存した気がするけど見つけられないのです。悲しい…無限に悲しい…。
*****【ドウドウメグリ】*****
欲しいものを改めて聞かれるとわりに困るものだ。
包みから出したばかりのそれをひろげて、そんなことをしみじみと思う。
手の中には真新しいマフラー。
青い、空の色の。
特別欲しかったわけでもないけれど、新しいのがあってもイイナと思っていたとか、そんな理由で。
なんとなく、そんな理由しか思い浮かばない自分に少々ガッカリしつつ、それでもそれなりに楽しそうに選んでくれている様子に少々ホッとしつつ、とにかく複雑な気分でわざわざラッピングされたそれを受取ってきた。
ついでに言えば、なにかビリビリとやぶいてはいけない気がして、殊更丁寧に包みをあけてみた。
彼女が言うには「好きな人」へのプレゼントらしい。
誰かに好かれるのは嬉しい、単純に。
嬉しい、けれど…
「…なんでオレ?」
自分は、ひどくつまらない人間で、唯一少しだけ誇れるとしたら、高校進学前に黒帯をとったことくらいで、それで? といわれれば、それだけです、としか答えられないようなことで。
とにかく、その他大勢を押しのけて好かれるようなタチじゃないのだ。
正直言って最初、耳元に囁かれたあの言葉は「好きな人」=「監察隊のみんな」になにか買って帰ろうとか、そういう意味かなと思っていたくらいだ。
それにしては言い回しがへんだなとも思いはしたけれど…。
なにが好かれる要因だったのか、検討なんてつくはずもなく、ただ、ここのところ一緒に過ごすことが多かったから、そうしているうちに好意的に受け止めてもらえることがあったのかもしれない、少しくらいは。
なにはともあれ、当初は怖がられていると思っていただけに、驚きはおおきくて。
そうして、やっぱりもう怖がられてないんだなってことが、なんだかとてつもなく嬉しいのだけれど。
そう、嬉しい。
嬉しいけれど…それだけじゃダメだろうってことは、わかってるのだ、なんとなく。
それでオマエはどうなんだ、とか、そういうことを、考えないといけないんじゃないか、いまは、きっと。
「スキは…スキ、だけどなぁ…確実に」
じゃあコレが恋愛のスキかと問われたら──よくわからない。
家族を想うのとも、友達を想うのとも、たしかに違う気はするけれど…好きの種類に線を引けと言われると、ひどく困る。
そもそも恋愛とか語るのに向いてないのだ、経験値が足りないどころか0から増えた試しがないのだから。
うえぇ…と唸ったところで、唐突に遠慮ナシに部屋のドアが開けられた
「オニーチャン、シャープの芯ちょーだ……あ、めずらしく趣味がいいー」
シャープペンを片手にやってきた薫は、めざとくマフラーをみつけると、当然のようにそれを手にとってクルリと首に巻きつける。
「こーゆー色の欲しかったんだよねぇ。ね、今度かして?」
「…貸さない」
「いいじゃん、使わないときだけでいいからさぁ?」
「てか、もらいもんだから、ソレ。貸せない」
返せという意味で手をつきだすと、薫はなにか嬉々とした表情を浮かべ、パチンとその手に掌を合わせた。
「そっか、そーゆーことかぁ…ていうか、よかったねぇ」
にこりと、満面の笑みをうかべる妹に、至は目顔で「なにが?」と、尋ねる。
「だから、なんか特別な意味でもらったんでしょう? やったね、やったね!」
遠慮ナシにバシバシと肩の辺りをはたかれて、もうちょっと手加減しろよと文句を言うはずだった口は、しかしまったく別の言葉を押し出した。
「薫はさぁ…特別好きと、フツーに好きの区切りってなんだと思う?」
「はぁ?」
呟くような問いかけに、薫はあからさまに飽きれた様子で顔をゆがめる。
「そんなの人それぞれなんじゃない?」
「そうだろうけど、たとえば、薫はどんなかなって思って」
「あたしぃ? うーんと、なんかピーンとくるっていうか、口じゃうまいこといえないけど…」
うーんと、そこだけはよく似ているねと評される困り顔をうかべていた薫は、暫くじっと兄の顔をみつめて、首から解いたマフラーを今度はスポンと至の首にひっかけて、ぐるぐると巻きつけはじめた。
「あのさ、オニーチャン…」
ぐるぐるとされるがままにマフラーを巻かれながら、至は妹の顔を見やる。
「そんなことマジメに考えるのって、フツーじゃなく意識してるからだと思わない?」
スコンと、なにかつっかえていたものを蹴飛ばされたような気がした。
目からウロコとか、鳩が豆鉄砲とか、こういうことかぁと、どうでもいいことが頭の隅によぎったりする。
「オニーチャンさぁ、難しいこと考えるの向いてないんだから、そのへんも単純に考えなよ。ていうか、そんなこと妹にマジメにきくのってかなり末期症状だと思うよ?」
妹は心配だよ? とかなんとか呟いた薫は、ポンとひとつ整えられた結び目にふれて、ヘフと溜息をついて、それからおもむろに机の引出しから目当てのものをさぐりだした。
「てゆーかさぁ、そんなこと聞くってことは、どうせちゃんと返事してないんでしょぉ?」
「返事…」
「そう返事。そーゆーのって勇気いるんだから、ちゃんと返事するのが礼儀ってもんだよ、わかってる?」
「あぁ、うん、そっか…だよなぁ」
じゃあ、とりあえず、まずは嬉しかったことを伝えないといけないな、とかなんとか考えている間に、薫はさっさと目当てのものを掘り当ててたらしく手にしていたシャープペンにつめはじめる。
「つきあった途端にあいそつかされないようにがんばってね、とりあえず」
「つきあう?」
「つきあうんじゃないの? てゆーかじゃあ、なんの返事するつもり? 大丈夫?」
あっさりとなにか三段跳びくらい飛躍した事を言われて、ポカンとしていると、不意に薫の顔が間近にヌッと寄ってきて、パチンと頭を軽くはたかれる。
「ねぇ、妹はホンットに心配だよ?」
「…いや、だから、まだ、そこまで考えて…なかったし…」
ゴニョゴニョとつぶやいて、なんとなく視線をそらす。
「まぁいいからさ、そのうち紹介してね? そしたらオニーチャンのイイトコもワルイトコもいっぱい教えといてあげるからさ。あいそつきるまえにうまいこと吹き込んどいたらきっと大丈夫だよ、うん。じゃあそーゆーことで、がんばって。コレありがと」
シャープペンをくるりと一度まわした薫は、なにかイソイソとした調子でそれだけ言い置くと、ドアを蹴倒すように開け閉てして、そのままの勢いで階段を駆け下りていったようだった。
反動で半分開いたままのドアを閉めにノロノロと立ったついでに、階下の様子をうかがって、なにか嬉々とした様子の妹と母親の声音に至はガクリと肩をおとした。
溜息がてらにドアを閉め、頬をくすぐるマフラーの感触に、少しばかり苦笑したい気分になってくる。
長いこと憧れて探してたものが、ひょいと手に入ってしまったような、そんな気分。
自分でも気づかないうちに、とっくに手に入れていたのかもしれないけれど。
少しこれまでのことを思い返してみようかなんて思い立って、コロリと寝転がって目を伏せて──3秒で跳ね起きた。
浮かんでくるの顔があの人なのは大いに問題じゃないか、だから。
そもそも、いま思い浮かべたのは、どっちだ? どっちだよ?
それぞれのことをとても好きだけれど、それで、薫の言うことによると、それぞれのことを特別好きだという結論になるのだけれど…。
バッタリと布団に伏せる。
なにやら連鎖反応で蓮向かいの幼馴染さんの顔なんかも浮かんできて。
事態はやっぱり複雑なんだと思い知らされて。
「うえぇ…」
はじめてわかりかけた気持を、また見失いそうになる、そんな冬の夜。
*****
ホモの先輩の別人格らしい乙女に告白された…?という状況でのお話。
このSSって実は結構、なんすぃにとってはターニングポイントでした。
ここでの葛藤があって結局一番気にしていた人は誰かわかってしまったという…
つか、外見が某彼でなければ「南君なにがほしい?」はとても萌えられたのに!
ちなみに「斜向かいの彼」はホモの先輩のスキナヒトです。
補足説明しないとわからない人が読んでるのかどうかなぞですが…(笑)
ホムペサービス終了らしいのでブログに移しました。
収納にあたりちょっと読み返しましたが、書いた当時は正しく覚えていたことも、だんだん美化されているんだろうなぁ…って思ったりする。当時のことを覚えていられるように全部を箱庭に収納しておきたかった。複数スレにまたがりながらロール探索するPB3は、テキスト全保存するのがなかなか難しいんですよねぇ…。せめて結果小説だけでも読み返したい…というか、保存した気がするけど見つけられないのです。悲しい…無限に悲しい…。
*****【ドウドウメグリ】*****
欲しいものを改めて聞かれるとわりに困るものだ。
包みから出したばかりのそれをひろげて、そんなことをしみじみと思う。
手の中には真新しいマフラー。
青い、空の色の。
特別欲しかったわけでもないけれど、新しいのがあってもイイナと思っていたとか、そんな理由で。
なんとなく、そんな理由しか思い浮かばない自分に少々ガッカリしつつ、それでもそれなりに楽しそうに選んでくれている様子に少々ホッとしつつ、とにかく複雑な気分でわざわざラッピングされたそれを受取ってきた。
ついでに言えば、なにかビリビリとやぶいてはいけない気がして、殊更丁寧に包みをあけてみた。
彼女が言うには「好きな人」へのプレゼントらしい。
誰かに好かれるのは嬉しい、単純に。
嬉しい、けれど…
「…なんでオレ?」
自分は、ひどくつまらない人間で、唯一少しだけ誇れるとしたら、高校進学前に黒帯をとったことくらいで、それで? といわれれば、それだけです、としか答えられないようなことで。
とにかく、その他大勢を押しのけて好かれるようなタチじゃないのだ。
正直言って最初、耳元に囁かれたあの言葉は「好きな人」=「監察隊のみんな」になにか買って帰ろうとか、そういう意味かなと思っていたくらいだ。
それにしては言い回しがへんだなとも思いはしたけれど…。
なにが好かれる要因だったのか、検討なんてつくはずもなく、ただ、ここのところ一緒に過ごすことが多かったから、そうしているうちに好意的に受け止めてもらえることがあったのかもしれない、少しくらいは。
なにはともあれ、当初は怖がられていると思っていただけに、驚きはおおきくて。
そうして、やっぱりもう怖がられてないんだなってことが、なんだかとてつもなく嬉しいのだけれど。
そう、嬉しい。
嬉しいけれど…それだけじゃダメだろうってことは、わかってるのだ、なんとなく。
それでオマエはどうなんだ、とか、そういうことを、考えないといけないんじゃないか、いまは、きっと。
「スキは…スキ、だけどなぁ…確実に」
じゃあコレが恋愛のスキかと問われたら──よくわからない。
家族を想うのとも、友達を想うのとも、たしかに違う気はするけれど…好きの種類に線を引けと言われると、ひどく困る。
そもそも恋愛とか語るのに向いてないのだ、経験値が足りないどころか0から増えた試しがないのだから。
うえぇ…と唸ったところで、唐突に遠慮ナシに部屋のドアが開けられた
「オニーチャン、シャープの芯ちょーだ……あ、めずらしく趣味がいいー」
シャープペンを片手にやってきた薫は、めざとくマフラーをみつけると、当然のようにそれを手にとってクルリと首に巻きつける。
「こーゆー色の欲しかったんだよねぇ。ね、今度かして?」
「…貸さない」
「いいじゃん、使わないときだけでいいからさぁ?」
「てか、もらいもんだから、ソレ。貸せない」
返せという意味で手をつきだすと、薫はなにか嬉々とした表情を浮かべ、パチンとその手に掌を合わせた。
「そっか、そーゆーことかぁ…ていうか、よかったねぇ」
にこりと、満面の笑みをうかべる妹に、至は目顔で「なにが?」と、尋ねる。
「だから、なんか特別な意味でもらったんでしょう? やったね、やったね!」
遠慮ナシにバシバシと肩の辺りをはたかれて、もうちょっと手加減しろよと文句を言うはずだった口は、しかしまったく別の言葉を押し出した。
「薫はさぁ…特別好きと、フツーに好きの区切りってなんだと思う?」
「はぁ?」
呟くような問いかけに、薫はあからさまに飽きれた様子で顔をゆがめる。
「そんなの人それぞれなんじゃない?」
「そうだろうけど、たとえば、薫はどんなかなって思って」
「あたしぃ? うーんと、なんかピーンとくるっていうか、口じゃうまいこといえないけど…」
うーんと、そこだけはよく似ているねと評される困り顔をうかべていた薫は、暫くじっと兄の顔をみつめて、首から解いたマフラーを今度はスポンと至の首にひっかけて、ぐるぐると巻きつけはじめた。
「あのさ、オニーチャン…」
ぐるぐるとされるがままにマフラーを巻かれながら、至は妹の顔を見やる。
「そんなことマジメに考えるのって、フツーじゃなく意識してるからだと思わない?」
スコンと、なにかつっかえていたものを蹴飛ばされたような気がした。
目からウロコとか、鳩が豆鉄砲とか、こういうことかぁと、どうでもいいことが頭の隅によぎったりする。
「オニーチャンさぁ、難しいこと考えるの向いてないんだから、そのへんも単純に考えなよ。ていうか、そんなこと妹にマジメにきくのってかなり末期症状だと思うよ?」
妹は心配だよ? とかなんとか呟いた薫は、ポンとひとつ整えられた結び目にふれて、ヘフと溜息をついて、それからおもむろに机の引出しから目当てのものをさぐりだした。
「てゆーかさぁ、そんなこと聞くってことは、どうせちゃんと返事してないんでしょぉ?」
「返事…」
「そう返事。そーゆーのって勇気いるんだから、ちゃんと返事するのが礼儀ってもんだよ、わかってる?」
「あぁ、うん、そっか…だよなぁ」
じゃあ、とりあえず、まずは嬉しかったことを伝えないといけないな、とかなんとか考えている間に、薫はさっさと目当てのものを掘り当ててたらしく手にしていたシャープペンにつめはじめる。
「つきあった途端にあいそつかされないようにがんばってね、とりあえず」
「つきあう?」
「つきあうんじゃないの? てゆーかじゃあ、なんの返事するつもり? 大丈夫?」
あっさりとなにか三段跳びくらい飛躍した事を言われて、ポカンとしていると、不意に薫の顔が間近にヌッと寄ってきて、パチンと頭を軽くはたかれる。
「ねぇ、妹はホンットに心配だよ?」
「…いや、だから、まだ、そこまで考えて…なかったし…」
ゴニョゴニョとつぶやいて、なんとなく視線をそらす。
「まぁいいからさ、そのうち紹介してね? そしたらオニーチャンのイイトコもワルイトコもいっぱい教えといてあげるからさ。あいそつきるまえにうまいこと吹き込んどいたらきっと大丈夫だよ、うん。じゃあそーゆーことで、がんばって。コレありがと」
シャープペンをくるりと一度まわした薫は、なにかイソイソとした調子でそれだけ言い置くと、ドアを蹴倒すように開け閉てして、そのままの勢いで階段を駆け下りていったようだった。
反動で半分開いたままのドアを閉めにノロノロと立ったついでに、階下の様子をうかがって、なにか嬉々とした様子の妹と母親の声音に至はガクリと肩をおとした。
溜息がてらにドアを閉め、頬をくすぐるマフラーの感触に、少しばかり苦笑したい気分になってくる。
長いこと憧れて探してたものが、ひょいと手に入ってしまったような、そんな気分。
自分でも気づかないうちに、とっくに手に入れていたのかもしれないけれど。
少しこれまでのことを思い返してみようかなんて思い立って、コロリと寝転がって目を伏せて──3秒で跳ね起きた。
浮かんでくるの顔があの人なのは大いに問題じゃないか、だから。
そもそも、いま思い浮かべたのは、どっちだ? どっちだよ?
それぞれのことをとても好きだけれど、それで、薫の言うことによると、それぞれのことを特別好きだという結論になるのだけれど…。
バッタリと布団に伏せる。
なにやら連鎖反応で蓮向かいの幼馴染さんの顔なんかも浮かんできて。
事態はやっぱり複雑なんだと思い知らされて。
「うえぇ…」
はじめてわかりかけた気持を、また見失いそうになる、そんな冬の夜。
*****
ホモの先輩の別人格らしい乙女に告白された…?という状況でのお話。
このSSって実は結構、なんすぃにとってはターニングポイントでした。
ここでの葛藤があって結局一番気にしていた人は誰かわかってしまったという…
つか、外見が某彼でなければ「南君なにがほしい?」はとても萌えられたのに!
ちなみに「斜向かいの彼」はホモの先輩のスキナヒトです。
補足説明しないとわからない人が読んでるのかどうかなぞですが…(笑)
2020-11-20 00:00
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