ワスレナイ【南至SS】 [PBWのSS]
PC語りで触れた社会人ナンシーの話を書いてみた。
ナンシーは大学でも就職でも実家離れてない子です。
で、就職してからは家にある程度お金いれてるタイプ。
大学あたりで女子とも普通につきあってると思われる。
てんちゃんのことはちょっと特殊で大切な思い出になってるんだよ。
引きずってるけど完結してるんだよ、と言いたかったのに。
なんだろうね、ナンシーさすがだな、胸苦しいわ。
あと、薫もさすがだわ、めっちゃ書きやすいわ。
なにげにこの兄妹は仲良しだと思うんだ。
とりあえず、私は書いてスッキリしたので、まぁよしとする。
*****【ワスレナイ】*****
集合教育を受けていた新入社員が各々の部署に配属される時季だった。
今年度は至にも指導係が言いわたされている。
昨年は指導された立場だったのに、一年違うだけで一変してしまう。むしろまだまだ指導されたいくらいなのに。
「よろしくお願いしまーっす」
新人は軽いノリで頭をさげた。
少し苦手なタイプだ。
その左目の脇に黒子があった。
デスク上のPCに戻しかけた視線を、思わず止めて注視してしまう。
「なんすか?」
「うぇっ? と、ごめん。知り合いが同じとこに黒子があって、思いだしただけ」
「女子ですか?」
「…違うけど」
好奇心の貼り付いた顔で至を見る目は遠慮ない。
彼とは暫く密に接しなければならない。
ずっと探られるのも面倒だなと思った。
「ちょっと憧れてた先輩、高校の。…とりあえず座って」
となりの席に座るように促した。
至の右隣に配置された席に座ると、嫌でも黒子が目につく。
こんなことくらいで、まだ心がざわつくのか――口元を引き締めた。
動揺している場合じゃない。業務に集中することにする。
「えっと、なにから説明しようか…」
嘘をついた。
ちょっとではなかった。
生まれてはじめて気持ちをぶつけるくらい好きだった。
男とか女とかではなくあの人が好きだった。
恋とは違うのかもしれないけれど、あの感情をほかに言い現す言葉が見付からない。
黒歴史として封じ込めるには純粋すぎて、でも触れたくなくて、壊れ物みたいにずっと心に残っている。
たぶん、死ぬまで。
*****
「ただいま」
「おかえり。学校から葉書きてたよ」
学校とは小中高大どれなのか。
大雑把な母にはあえて聞かず、葉書で確認することにする。
「どこ? ちょうだい」
「あんたの部屋に置いといた」
ん、とだけ返事して二階に上がった。
机の上の葉書を手に取る。
『石蕗高校第○期生同窓会ご案内』
字面を目で追って、机にもどす。
シャツのボタンを緩めながら、傍らのベッドに仰向けに転がった。
同じ学校を卒業しても、学年が違うだけで会う機会はほぼない。
もう一年早く生まれていたら、あのとき奔走した仲間たちの顔もみられるだろうに。
そうしたら、行く気にもなっただろうか。
敢えて、行かない選択をするだろうか。
「ねー、内定ってどうやって貰うの、もう、わっかんない」
「うぇ?」
突如として乱入してきた薫がばったりと隣に倒れこんでくる。
二つ下の妹は絶賛就活中らしい。
要領のいい薫でもまだ内定は貰えていないようだ。
「今日、面接?」
「そう。圧力最悪だった。嫌みっぽいおっさん。落ちたわ」
「あれはまぁ、対応見てるわけだから、切り返し次第で印象づければさ」
「お兄ちゃんでさえ就職してるのに…。ていうかさ、むしろそれ見てよゆーよゆーと思ったのが敗因だよね。あー騙されたわーお兄ちゃんのせいでー」
それは俺が悪いのか?
聞いたところで当然だの謝れだの理不尽なことを言われるに違いない。
黙って頭をとん、と撫でてやると、薫はジタバタと悶えていた体をピタリと止めた。
「お兄ちゃんさ…まだマフラーのひと引きずってるの?」
「うぇあ!?」
唐突すぎる話題の変わりかたに、変な声が出た。
思わず跳ね起きる。
「変な声だすなよキモイ。高校の同窓会あるんでしょ」
「…学年違うし」
「なぁんだ、詰まんねぇー。より戻せばと思ったのになー」
戻すもなにも、始まりもしなかったのだが。
「なにげにあの頃、生き生きしてる感じでさー、お兄ちゃんのくせにわりとキラキラしてたのにー」
「今は?」
「今ー?」
顎を持ち上げてじっと至の顔を見据えた薫は、心底嫌そうな表情になっていく。
「社会人ムカつくという目でしか見えない」
「でもお前さ、永久就職するとか言ってなかったっけ」
「先月終わりました。奴が社会人になったとたんに終わりました。蒸し返すなよ、ムカつくな」
社会人をやたら敵視しているのはそれも理由に含まれるのか。
「まぁ、頑張れとしか、言えない」
「お前もなって言っとくよ。…あー、うちも同窓会ないかなー、久々にあって南イイ女になったなみたいな展開こないかなー」
階下から「ごはんー」と母の声が聞こえた。
ふたりそろって「んー」「いまいくー」と答える。
落ち着く日常だな、と至は思った。
まだ心がざわつきはするけれど、日常はぬるくて優しくて、それでいいんだと思える。
高一のひと時、怒涛のようなあの日々よりも、自分には似合っていると思えた。
あなたへの想いは忘れない。
けれど、振り返りもしない。
後悔もしないよ。
たぶん、死ぬまで。
*****
関わりはしないから死ぬまで好きでいさせてください。
ところで、友人PCさんは全員先輩女子だったので、
同窓会にいってもナンシーはつまんないと思うのよ。
1年生って誰が居たんだっけ?
トッキーとニーナちゃんしか思い出せない…。
ナンシーは大学でも就職でも実家離れてない子です。
で、就職してからは家にある程度お金いれてるタイプ。
大学あたりで女子とも普通につきあってると思われる。
てんちゃんのことはちょっと特殊で大切な思い出になってるんだよ。
引きずってるけど完結してるんだよ、と言いたかったのに。
なんだろうね、ナンシーさすがだな、胸苦しいわ。
あと、薫もさすがだわ、めっちゃ書きやすいわ。
なにげにこの兄妹は仲良しだと思うんだ。
とりあえず、私は書いてスッキリしたので、まぁよしとする。
*****【ワスレナイ】*****
集合教育を受けていた新入社員が各々の部署に配属される時季だった。
今年度は至にも指導係が言いわたされている。
昨年は指導された立場だったのに、一年違うだけで一変してしまう。むしろまだまだ指導されたいくらいなのに。
「よろしくお願いしまーっす」
新人は軽いノリで頭をさげた。
少し苦手なタイプだ。
その左目の脇に黒子があった。
デスク上のPCに戻しかけた視線を、思わず止めて注視してしまう。
「なんすか?」
「うぇっ? と、ごめん。知り合いが同じとこに黒子があって、思いだしただけ」
「女子ですか?」
「…違うけど」
好奇心の貼り付いた顔で至を見る目は遠慮ない。
彼とは暫く密に接しなければならない。
ずっと探られるのも面倒だなと思った。
「ちょっと憧れてた先輩、高校の。…とりあえず座って」
となりの席に座るように促した。
至の右隣に配置された席に座ると、嫌でも黒子が目につく。
こんなことくらいで、まだ心がざわつくのか――口元を引き締めた。
動揺している場合じゃない。業務に集中することにする。
「えっと、なにから説明しようか…」
嘘をついた。
ちょっとではなかった。
生まれてはじめて気持ちをぶつけるくらい好きだった。
男とか女とかではなくあの人が好きだった。
恋とは違うのかもしれないけれど、あの感情をほかに言い現す言葉が見付からない。
黒歴史として封じ込めるには純粋すぎて、でも触れたくなくて、壊れ物みたいにずっと心に残っている。
たぶん、死ぬまで。
*****
「ただいま」
「おかえり。学校から葉書きてたよ」
学校とは小中高大どれなのか。
大雑把な母にはあえて聞かず、葉書で確認することにする。
「どこ? ちょうだい」
「あんたの部屋に置いといた」
ん、とだけ返事して二階に上がった。
机の上の葉書を手に取る。
『石蕗高校第○期生同窓会ご案内』
字面を目で追って、机にもどす。
シャツのボタンを緩めながら、傍らのベッドに仰向けに転がった。
同じ学校を卒業しても、学年が違うだけで会う機会はほぼない。
もう一年早く生まれていたら、あのとき奔走した仲間たちの顔もみられるだろうに。
そうしたら、行く気にもなっただろうか。
敢えて、行かない選択をするだろうか。
「ねー、内定ってどうやって貰うの、もう、わっかんない」
「うぇ?」
突如として乱入してきた薫がばったりと隣に倒れこんでくる。
二つ下の妹は絶賛就活中らしい。
要領のいい薫でもまだ内定は貰えていないようだ。
「今日、面接?」
「そう。圧力最悪だった。嫌みっぽいおっさん。落ちたわ」
「あれはまぁ、対応見てるわけだから、切り返し次第で印象づければさ」
「お兄ちゃんでさえ就職してるのに…。ていうかさ、むしろそれ見てよゆーよゆーと思ったのが敗因だよね。あー騙されたわーお兄ちゃんのせいでー」
それは俺が悪いのか?
聞いたところで当然だの謝れだの理不尽なことを言われるに違いない。
黙って頭をとん、と撫でてやると、薫はジタバタと悶えていた体をピタリと止めた。
「お兄ちゃんさ…まだマフラーのひと引きずってるの?」
「うぇあ!?」
唐突すぎる話題の変わりかたに、変な声が出た。
思わず跳ね起きる。
「変な声だすなよキモイ。高校の同窓会あるんでしょ」
「…学年違うし」
「なぁんだ、詰まんねぇー。より戻せばと思ったのになー」
戻すもなにも、始まりもしなかったのだが。
「なにげにあの頃、生き生きしてる感じでさー、お兄ちゃんのくせにわりとキラキラしてたのにー」
「今は?」
「今ー?」
顎を持ち上げてじっと至の顔を見据えた薫は、心底嫌そうな表情になっていく。
「社会人ムカつくという目でしか見えない」
「でもお前さ、永久就職するとか言ってなかったっけ」
「先月終わりました。奴が社会人になったとたんに終わりました。蒸し返すなよ、ムカつくな」
社会人をやたら敵視しているのはそれも理由に含まれるのか。
「まぁ、頑張れとしか、言えない」
「お前もなって言っとくよ。…あー、うちも同窓会ないかなー、久々にあって南イイ女になったなみたいな展開こないかなー」
階下から「ごはんー」と母の声が聞こえた。
ふたりそろって「んー」「いまいくー」と答える。
落ち着く日常だな、と至は思った。
まだ心がざわつきはするけれど、日常はぬるくて優しくて、それでいいんだと思える。
高一のひと時、怒涛のようなあの日々よりも、自分には似合っていると思えた。
あなたへの想いは忘れない。
けれど、振り返りもしない。
後悔もしないよ。
たぶん、死ぬまで。
*****
関わりはしないから死ぬまで好きでいさせてください。
ところで、友人PCさんは全員先輩女子だったので、
同窓会にいってもナンシーはつまんないと思うのよ。
1年生って誰が居たんだっけ?
トッキーとニーナちゃんしか思い出せない…。
2016-06-22 12:00
コメント(0)
トラックバック(0)
コメント 0